「〇〇先生は論文を100本書いている。」
大学では、このような話を耳にすることがあります。
論文数は研究者の業績を表す最も分かりやすい指標であり、大学ランキングや研究力分析でも頻繁に利用されています。
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一見すると、論文数が多い研究者ほど優秀であるように思えます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
実は、論文数だけで研究者を評価することには多くの問題があります。
論文数は「量」を表す指標
論文数は、その名のとおり研究者が発表した論文の件数です。
データとして取得しやすく、誰でも同じ基準で集計できるため、大学や研究機関でも広く利用されています。
例えば、世界大学ランキングでは、論文数が評価項目の一つとして利用されています。また、文部科学省や科学技術・学術政策研究所(NISTEP)でも、日本の研究力を分析する際に論文数を基本指標として用いています。
論文数は研究活動の規模を知る上では非常に有効な指標です。
しかし、それだけでは研究者の実力を十分に表しているとは言えません。
分野によって論文数は大きく異なる
最も大きな理由は、研究分野による違いです。
例えば医学や生命科学では、多人数による共同研究が一般的です。
一つの論文に20人、50人、ときには100人以上の研究者が著者として掲載されることもあります。
その結果、一人の研究者が年間20本以上の論文を発表することも珍しくありません。
一方、数学では一つの論文を完成させるまでに数年かかることがあります。
人文社会科学でも、一冊の学術書や長期間のフィールドワークが研究成果となる場合があり、年間に発表される論文数は自然と少なくなります。
つまり、
「年間20本」と「年間3本」を単純に比較することはできないのです。
共著論文はどう考えるべきか
もう一つの問題は共著です。
近年の研究は高度化・専門化が進み、一人だけで完結する研究は少なくなっています。
そのため、多くの論文は複数の研究者による共同研究です。
しかし、共著者の役割は同じではありません。
研究全体を統括した研究者もいれば、解析だけを担当した研究者もいます。
実験装置の提供やデータ収集だけを担当した研究者が著者に含まれる場合もあります。
つまり、「論文1本」という数字だけでは、その研究者がどのような役割を果たしたのかは分からないのです。
責任著者を見るという考え方
近年では、責任著者(Corresponding Author)や第一著者(First Author)に注目する分析も増えています。
責任著者は、研究全体を取りまとめ、論文投稿や査読対応を担うことが多く、研究の中心的役割を果たした研究者である場合が一般的です。
もちろん分野によって慣習は異なりますが、単純な論文数よりも、責任著者論文数の方が研究への主体的な貢献を反映しやすい場面があります。
私自身も研究データを分析する際には、責任著者論文数を別に集計することがあります。
論文数だけでは見えなかった研究者の特徴が、責任著者という視点を加えることで見えてくることがあるからです。
「質」は論文数では測れない
仮に二人の研究者がいたとします。
一人は年間20本の論文を書いています。
もう一人は年間3本しか発表していません。
数字だけを見れば前者が優秀に思えるでしょう。
しかし、その3本が世界中で何千回も引用されるような画期的な研究だったらどうでしょうか。
論文数だけでは、その違いを評価することはできません。
実際、ノーベル賞級の研究成果であっても、論文数自体は決して多くない研究者もいます。
研究の価値は「何本書いたか」だけではなく、「どのような研究だったか」によって大きく変わります。
論文数は重要な指標である
ここまで論文数の限界を述べてきましたが、論文数が不要という意味ではありません。
論文数は、研究活動の継続性や生産性を把握する上で非常に重要な指標です。
問題なのは、「論文数だけ」で研究者を評価してしまうことです。
論文数、責任著者論文数、被引用数、研究費、共同研究、社会実装など、複数の視点を組み合わせることで、初めて研究者の姿が見えてきます。
研究者評価には万能な指標はありません。
だからこそ、それぞれの指標が何を表し、何を表していないのかを理解しながら活用することが大切なのです。



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