これまでの記事では、度数分布表やヒストグラム、棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフを使って、データ全体の特徴を視覚的に捉える方法について学びました。
しかし、データが多くなると、「結局、このデータを一言で表すとどうなるのだろう」と考える場面があります。
例えば、クラス30人分のテストの点数をすべて見せられても、一人ひとりの点数を確認するだけでは、クラス全体の学力を把握することは簡単ではありません。
このようなときに役立つのが代表値です。
代表値とは、多くのデータを一つの値で代表させる考え方であり、その中でも最もよく利用されるのが平均値です。
平均値は、私たちの日常生活でも最も身近な統計量と言えるでしょう。学校のテストでは「平均点」、天気予報では「平均気温」、スポーツでは「平均得点」、経済では「平均年収」など、「平均」という言葉を聞かない日はないほどです。
では、平均値とはどのような値なのでしょうか。
平均値とは、すべてのデータを足し合わせ、その個数で割った値のことです。
例えば、5人のテストの点数が次のようになっていたとします。
60点、70点、80点、90点、100点
これらをすべて足すと400点になります。
そして、5人なので、
400 ÷ 5 = 80
となり、このクラスの平均点は80点です。
数式で表すと、平均値は次のようになります。
平均値 = データの合計 ÷ データの個数
非常に単純な計算ですが、この一つの数字によって、データ全体の中心的な位置を表すことができます。
平均値には、大きなメリットがあります。
まず、多くのデータを一つの数字にまとめられることです。
例えば、100人分の身長データがあったとしても、「平均身長170cm」と表現すれば、おおよその体格をイメージできます。
また、異なる集団同士を比較しやすくなることも平均値の利点です。
例えば、Aクラスの平均点が78点、Bクラスが84点だった場合、Bクラスの方が全体的に成績が高いことが分かります。
研究や企業でも平均値は頻繁に利用されています。
新薬の効果を比較するときには平均血圧や平均血糖値を調べますし、自動車の燃費比較では平均燃費が利用されます。商品のレビューでも平均評価が表示されることが一般的です。
このように、平均値はデータ全体を代表する非常に便利な指標なのです。

しかし、平均値には弱点もあります。
それは、極端な値(外れ値)の影響を受けやすいということです。
例えば、5人の年収が次のようだったとします。
300万円、320万円、330万円、340万円、3億円
この場合、平均年収を計算すると約6,058万円になります。
しかし、この数字だけを見ると、「この会社は非常に高収入だ」と思ってしまうかもしれません。
実際には、ほとんどの人は300万円台であり、一人だけ極端に高い年収の人が平均を大きく押し上げているのです。
このような例から分かるように、平均値だけではデータの実態を正しく表せない場合があります。
そのため、統計学では平均値だけを見るのではなく、中央値や最頻値、ヒストグラムなども合わせて確認することが重要になります。
また、平均値を比較するときには、データ数にも注意が必要です。
例えば、Aクラス10人の平均点が80点、Bクラス40人の平均点が79点だった場合、「Aクラスの方が優秀だ」と簡単には言えません。
人数が違えば、平均値の安定性も変わってくるからです。
研究論文では、平均値だけを示すのではなく、「平均値±標準偏差」といった形でばらつきも同時に示すことが一般的です。
つまり、平均値は重要な指標ではありますが、それだけではデータの特徴を十分に表現できないこともあるのです。
統計学では、「平均値を計算したら終わり」ではありません。
平均値がどのようなデータから計算されたのか、その背景まで考えることが大切です。
近年では、ニュースやインターネットでも平均値が頻繁に利用されています。
「平均寿命が延びた」「平均年収が増えた」「平均気温が過去最高だった」といった情報を見ることがあります。
しかし、その数字だけを鵜呑みにするのではなく、「一部の極端な値が影響していないだろうか」「全体の分布はどうなっているのだろうか」と考えることが、統計リテラシーにつながります。
平均値は便利な指標ですが、万能ではありません。
だからこそ、統計学では平均値の特徴と限界の両方を理解することが重要なのです。
例題1(基礎)
問題
次の5人の数学のテストの点数があります。
60点、70点、80点、90点、100点
この5人の平均点を求めましょう。
解答
平均値は、
(60+70+80+90+100)÷5
=400÷5
=80点
解説
平均値は、「すべてのデータの合計をデータ数で割る」ことで求めます。
この問題では、合計は400点であり、人数は5人なので、平均点は80点になります。
例題2(応用)
問題
ある会社の5人の月給は次のとおりでした。
28万円、30万円、31万円、32万円、200万円
この会社の平均月給を求め、この平均値だけを見て会社全体の給与水準を判断することが適切か考えましょう。
解答
平均月給は、
(28+30+31+32+200)÷5
=321÷5
=64.2万円
解説
平均月給は64.2万円になります。しかし、実際には4人が30万円前後であり、1人だけ200万円という非常に高い月給になっています。
このように、極端な値が存在すると平均値は大きく影響を受けます。そのため、この会社全体の給与水準を平均値だけで判断することは適切ではありません。
このような場合には、次回学ぶ中央値を利用すると、より実態に近い代表値を得ることができます。
まとめ
平均値は、すべてのデータを足し合わせ、その個数で割って求める代表値です。データ全体を一つの数字で表せるため、学校の成績や企業の売上、医療や経済など、さまざまな分野で利用されています。
一方で、平均値は外れ値の影響を受けやすいという特徴があります。そのため、平均値だけを見て判断するのではなく、データの分布や中央値、最頻値なども合わせて確認することが重要です。
統計学では、「平均値を求めること」が目的ではありません。その平均値がデータを正しく代表しているかを考えることこそが、本当の統計的な考え方なのです。
次の記事

平均値の弱点を補う代表値が「中央値」です。次回は、外れ値の影響を受けにくい中央値の考え方と、平均値との違いについて詳しく学んでいきましょう。

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