前回は、代表値の一つである中央値について学びました。中央値は、データを小さい順に並べたときの真ん中に位置する値であり、外れ値の影響を受けにくいという特徴がありました。
代表値には、平均値、中央値のほかに、もう一つ重要なものがあります。
それが**最頻値(さいひんち)**です。
最頻値は、学校の授業では平均値や中央値ほど詳しく扱われないこともありますが、実際の社会では非常によく利用されています。商品のサイズや人気商品の分析、アンケート調査、マーケティングなどでは、最頻値が重要な指標になることも少なくありません。
今回は、最頻値とは何か、その求め方や特徴、平均値・中央値との違いについて学んでいきましょう。
最頻値とは、データの中で最も多く現れる値のことです。
英語では「Mode(モード)」と呼ばれます。
例えば、次のようなテストの点数があったとします。
70点、75点、80点、80点、82点、85点、90点
この中で最も多く現れているのは80点です。
80点は2回登場していますが、それ以外の点数は1回しか現れていません。
したがって、このデータの最頻値は80点になります。
平均値のように計算する必要はありません。
中央値のように真ん中を探す必要もありません。
最頻値は、「最も多く現れた値」を見つけるだけで求めることができます。
では、すべての値が一度ずつしか現れない場合はどうなるでしょうか。
例えば、
60点、70点、80点、90点、100点
というデータでは、どの値も1回しか現れていません。
このような場合は、最頻値は存在しないと考えます。
反対に、最も多く現れる値が二つ以上ある場合もあります。
例えば、
60点、70点、70点、80点、80点、90点
というデータでは、70点と80点がともに2回ずつ現れています。
このような場合は、70点と80点の両方が最頻値になります。
つまり、最頻値は必ず一つとは限らず、複数存在することもあるのです。
最頻値には、大きな特徴があります。
それは、カテゴリデータにも利用できる代表値であるということです。
例えば、あるお店で人気の飲み物を調査したとします。
コーヒー、紅茶、コーヒー、ジュース、コーヒー、紅茶
このデータでは、「コーヒー」が最も多く現れています。
平均値や中央値は、このような文字データには利用できません。
しかし、最頻値なら「最も人気がある商品はコーヒーである」と表現できます。
このことから、最頻値はアンケート調査や市場調査、マーケティングなどで非常によく利用されています。
例えば、洋服店では最も売れているサイズ、靴店では最も売れているサイズ、食品メーカーでは最も人気の商品などを調べる際に最頻値が利用されています。
病院では最も多い症状、学校では最も多い通学手段なども、最頻値によって把握できます。
このように、最頻値は「最も一般的なもの」を知るための代表値と言えるでしょう。
一方で、最頻値にも弱点があります。
例えば、10、20、20、30、100
というデータでは、最頻値は20になります。
しかし、このデータ全体を見たとき、「20だけで全体を代表している」と考えるのは少し難しいかもしれません。
また、すべての値が異なる場合には最頻値が存在しません。
さらに、データの分布によっては複数の最頻値が現れることもあります。
つまり、最頻値だけではデータ全体の特徴を十分に表せない場合があるのです。

ここで、平均値・中央値・最頻値を比較してみましょう。
平均値は、すべてのデータを利用して計算するため、データ全体を反映しやすい一方、外れ値の影響を受けやすいという特徴があります。
中央値は、外れ値の影響を受けにくく、年収や住宅価格など偏ったデータによく利用されます。
そして最頻値は、最も多く現れる値を示すため、人気商品やアンケートなどカテゴリデータにも利用できるという特徴があります。
つまり、三つの代表値には、それぞれ異なる役割があるのです。
研究の現場でも、三つを組み合わせて利用することがあります。
例えば、患者の年齢では平均値や中央値を用い、最も多い症状や診断名では最頻値を利用するといった使い分けが行われています。
また、教育分野では平均点だけでなく、最も多い点数を確認することで、テストの難易度を考察することもあります。
統計学では、「どの代表値を使うか」はデータの種類や目的によって決まります。
一つの代表値だけを見るのではなく、複数の代表値を比較することで、データの特徴をより深く理解できるようになるのです。
例題1(基礎)
問題
次のデータの最頻値を求めましょう。
65、70、70、72、75、80、80、80、90
解答
最頻値:80
解説
データの中で最も多く現れている値を探します。
65は1回、70は2回、72は1回、75は1回、80は3回、90は1回です。
最も多く現れているのは80なので、最頻値は80となります。
例題2(応用)
問題
ある衣料品店で、1週間に売れたTシャツのサイズを調査しました。
M、L、M、S、M、L、LL、M、L、M
① このデータの最頻値を求めましょう。
② 平均値や中央値ではなく、最頻値を用いる理由を考えましょう。
解答
① 最頻値:M
② サイズは数値データではなくカテゴリデータであるため、平均値や中央値は適切ではありません。最も多く売れたサイズを知ることが目的なので、最頻値が最も適した代表値になります。
解説
このデータでは、Mサイズが5回、Lサイズが3回、SサイズとLLサイズがそれぞれ1回ずつ現れています。
最も多く売れたサイズはMサイズです。
商品の仕入れや在庫管理では、「最も売れるサイズ」を把握することが重要であり、そのような場面では最頻値が大きな役割を果たしています。
まとめ
最頻値とは、データの中で最も多く現れる値のことであり、代表値の一つです。平均値や中央値とは異なり、計算を必要とせず、最も頻繁に現れる値を調べるだけで求められます。
また、最頻値は文字データやカテゴリデータにも利用できるという特徴があり、アンケート調査や市場調査、商品の販売分析など、幅広い分野で活用されています。
一方で、最頻値が存在しない場合や、複数存在する場合もあるため、最頻値だけでデータ全体を判断することは適切ではありません。
統計学では、平均値・中央値・最頻値をそれぞれの特徴に応じて使い分けることが重要です。三つの代表値を比較することで、データの性質をより正確に理解できるようになります。
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「散らばりとは?なぜ平均値だけではデータを説明できないのかをわかりやすく解説」

代表値を学んだ次は、データの「散らばり」に注目します。平均値が同じでも、データの広がり方は大きく異なることがあります。次回は、分散や標準偏差につながる重要な考え方である「散らばり」について学んでいきましょう。

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