毎年、世界大学ランキングが公表されると、大学の順位が大きなニュースになります。
「○○大学が世界100位以内に入った」
「日本の大学が前年より順位を落とした」
こうした見出しを見ると、順位が高い大学ほど研究力が高く、順位が下がった大学では研究活動が低下しているように感じられます。
▼研究力に関する記事はこちら

しかし、大学ランキングは、論文数や被引用数を単純に並べたものではありません。
実際には、教育、研究、評判、国際性、産学連携など、性質の異なる複数の指標を標準化し、それぞれに重みを付けて合計点を算出しています。
しかも、どの項目を評価し、どの程度の重みを付けるかは、ランキングによって大きく異なります。
そのため、大学ランキングを正しく理解するには、最終的な順位だけでなく、その順位がどのような計算によって作られているのかを確認する必要があります。
本記事では、代表的な世界大学ランキングであるTHE、QS、ARWUについて、評価項目と計算方法を研究評価の観点から解説します。
世界大学ランキングは一つではない
世界で広く知られている大学ランキングには、主に次の3つがあります。
・Times Higher Education World University Rankings(THE)
・QS World University Rankings(QS)
・Academic Ranking of World Universities(ARWU、上海ランキング)
いずれも大学を世界規模で比較するランキングですが、評価対象は同じではありません。
THEは、教育、研究環境、研究の質、国際性、産学連携を総合的に評価します。
QSは、学術関係者や企業からの評判、教員当たり被引用数、教員学生比、国際性などを重視します。
ARWUは、ノーベル賞やフィールズ賞の受賞者、高被引用研究者、Nature・Science掲載論文など、研究成果を中心に評価します。
つまり、THEは大学の総合的な活動、QSは評判や教育環境を含む大学ブランド、ARWUは研究実績を比較的強く反映するランキングと捉えることができます。
同じ大学でもランキングによって順位が異なるのは、この評価思想の違いがあるためです。
大学ランキングの基本的な計算構造
多くの大学ランキングは、概念的には次のような加重平均によって総合得点を算出しています。
総合得点 = 指標1の得点 × 指標1の重み
+ 指標2の得点 × 指標2の重み
+ ……
+ 指標nの得点 × 指標nの重み
数式で表すと、次のようになります。
総合得点 = Σ(標準化された指標得点 × 指標の重み)
ここで重要なのは、論文数、研究費、アンケート得票数、外国人教員比率など、単位の異なるデータをそのまま足し合わせることはできないという点です。
例えば、ある大学について、次のようなデータがあったとします。
論文数:5,000本
教員1人当たり研究費:600万円
外国人教員比率:8%
評判調査得票数:1,200票
これらをそのまま合計しても意味のある数字にはなりません。
そこで、ランキングでは各指標を共通の尺度に変換する「標準化」が行われます。
標準化後の指標を0点から100点までのスコアに変換し、そこに所定の重みを掛けて総合得点を計算するのが基本的な仕組みです。
THE世界大学ランキングの計算方法
THE World University Rankings 2026では、大学を5つの柱と18の指標から評価しています。
大分類ごとの配点は次のとおりです。
THEの評価項目と配点
教育環境:29.5%
・教育に関する評判:15.0%
・教員学生比率:4.5%
・博士号取得者数と学士号取得者数の比率:2.0%
・教員当たり博士号授与数:5.5%
・教員当たり大学収入:2.5%
研究環境:29.0%
・研究に関する評判:18.0%
・教員当たり研究収入:5.5%
・教員当たり研究生産性:5.5%
研究の質:30.0%
・引用インパクト:15.0%
・研究力:5.0%
・卓越研究:5.0%
・研究影響力:5.0%
国際性:7.5%
・外国人学生比率:2.5%
・外国人教員比率:2.5%
・国際共著論文比率:2.5%
産業との関係:4.0%
・教員当たり産業界収入:2.0%
・大学の研究成果を引用した特許:2.0%
これらを合計すると100%になります。THEは、教育と研究環境と研究の質だけで全体の88.5%を占める設計です。
THEの総合点を簡略化して計算してみる
仮に、ある大学の標準化後の各大分類スコアが次の値だったとします。
教育環境:60点
研究環境:55点
研究の質:70点
国際性:40点
産業との関係:65点
この大学の総合点は、次のように計算できます。
教育環境
60 × 0.295 = 17.70
研究環境
55 × 0.290 = 15.95
研究の質
70 × 0.300 = 21.00
国際性
40 × 0.075 = 3.00
産業との関係
65 × 0.040 = 2.60
したがって、総合得点は、
17.70 + 15.95 + 21.00 + 3.00 + 2.60
= 60.25点
となります。
この例では、国際性が40点と比較的低くても、配点が7.5%であるため、総合点への影響は限定的です。
一方、研究の質は30%を占めるため、研究の質が10点変化すれば、総合得点は3点変化します。
同じ10点の変化でも、産業との関係であれば総合得点への影響は0.4点にとどまります。
このように、大学ランキングでは「どの項目が高いか」だけでなく、「その項目に何%の重みが設定されているか」が重要です。
THEにおける研究力の内訳
THEでは「研究力」に近い指標が複数の項目に分散しています。
例えば、研究環境には、研究評判、研究収入、研究生産性が含まれます。
研究の質には、引用インパクト、研究力、卓越研究、研究影響力が含まれます。
引用インパクト
引用インパクトでは、大学の論文が世界平均と比較してどの程度引用されているかを評価します。
単純な被引用数ではなく、研究分野による引用習慣の違いを調整した指標が用いられます。
医学や生命科学は一般に引用数が多く、数学や人文社会科学は少ないため、分野補正を行わなければ、医学系の比率が高い大学が有利になります。
THEでは、こうした分野差を補正したうえで引用インパクトを評価しています。
研究力
THEのResearch Strengthは、大学に所属する論文の分野補正済み引用インパクトについて、75パーセンタイル値を用いる指標です。
75パーセンタイルとは、論文を指標値の低い順に並べたとき、下から75%の位置にある値です。
単純平均では、一部の極端に高い被引用論文によって大学全体のスコアが押し上げられることがあります。
75パーセンタイルを使うことで、少数の超高被引用論文だけでなく、大学の研究成果の比較的広い部分がどの程度の水準にあるかを測ろうとしています。
卓越研究
Research Excellenceでは、世界の上位10%に入る分野補正済み高被引用論文数を評価します。
例えば、ある大学が1,000本の論文を発表し、そのうち150本が各分野・各年の上位10%論文に該当した場合、単純な割合は、
150 ÷ 1,000 = 15%
となります。
ただし、THEの実際の計算では、発表年、研究分野、教員数などによる正規化も行われます。
研究影響力
Research Influenceでは、単に引用された回数だけでなく、どのような論文から引用されたかも考慮されます。
影響力の高い論文から受けた引用をより重要なものとして扱う、ネットワーク型の評価に近い考え方です。
すべての引用を同じ1件として数えるのではなく、引用元の影響力も含めて評価する仕組みです。
THEでは生データをそのまま合計しない
THEでは、各指標の生データをそのまま合計するのではなく、データ分布を利用して標準化します。
公式説明によれば、多くの指標でZスコアに類似した方法と累積確率関数が用いられています。
一般的なZスコアは、次の式で表されます。
Z =(大学の値 - 全大学の平均値)÷ 標準偏差
例えば、教員当たり論文数について、
全大学平均:2.0本
標準偏差:0.8本
大学A:3.2本
だった場合、
Z =(3.2 - 2.0)÷ 0.8
= 1.5
となります。
これは大学Aが平均より1.5標準偏差高い位置にあることを意味します。
ただし、THEの実際の標準化は単純なZスコアだけではありません。評判、卓越研究、研究影響力、特許など、分布の偏りが大きい指標には指数的な調整も用いられています。
そのため、大学が公開情報だけを使ってTHEの最終スコアを完全に再現することは困難です。
QS世界大学ランキングの計算方法
QS World University Rankingsでは、研究だけでなく、学術的評判、企業からの評判、教育環境、国際性、サステナビリティを含めて評価します。
現在の公式方法では、次の指標と配点が示されています。
QSの評価項目と配点
研究と発見:50%
・学術的評判:30%
・教員当たり被引用数:20%
就職力と成果:20%
・企業からの評判:15%
・雇用成果:5%
学習環境:10%
・教員学生比率:10%
国際的関与:15%
・外国人教員比率:5%
・国際研究ネットワーク:5%
・外国人学生比率:5%
・外国人学生の多様性:0%
サステナビリティ:5%
・サステナビリティ:5%
合計は100%です。
QSの総合点を簡略化して計算してみる
仮に大学Bの各指標スコアが次の値だったとします。
学術的評判:70点
教員当たり被引用数:50点
企業からの評判:60点
雇用成果:55点
教員学生比率:45点
外国人教員比率:30点
国際研究ネットワーク:65点
外国人学生比率:35点
サステナビリティ:50点
各指標に重みを掛けると、
学術的評判
70 × 0.30 = 21.00
教員当たり被引用数
50 × 0.20 = 10.00
企業からの評判
60 × 0.15 = 9.00
雇用成果
55 × 0.05 = 2.75
教員学生比率
45 × 0.10 = 4.50
外国人教員比率
30 × 0.05 = 1.50
国際研究ネットワーク
65 × 0.05 = 3.25
外国人学生比率
35 × 0.05 = 1.75
サステナビリティ
50 × 0.05 = 2.50
合計すると、
21.00 + 10.00 + 9.00 + 2.75 + 4.50
+ 1.50 + 3.25 + 1.75 + 2.50
= 56.25点
となります。
QSでは、学術的評判30%と企業からの評判15%を合わせると、評判調査が総合点の45%を占めます。
したがって、QSの順位は論文データだけで決まるものではありません。
長年にわたって世界的な知名度を構築してきた大学は、評判指標で高いスコアを得やすい構造になっています。
QSの教員当たり被引用数
QSのCitations per Facultyは、概念的には次の式で表されます。
教員当たり被引用数 = 対象論文が受けた引用数 ÷ 教員数
例えば、
対象期間の被引用数:200,000件
教員数:4,000人
であれば、
200,000 ÷ 4,000 = 教員1人当たり50件
となります。
大学規模を調整するため、引用総数を教員数で割るのが特徴です。
ただし、研究分野によって引用数が大きく異なるため、実際のランキングでは分野差を考慮した調整が行われます。
教員数が分母に入るため、大規模大学であっても、教員数に比例して引用数が増えなければスコアは高くなりません。
一方、小規模で研究集約的な大学は、引用総数が大規模大学より少なくても、教員当たりの値では高くなる可能性があります。
QSの国際研究ネットワーク
QSのInternational Research Networkは、単純な国際共著率ではありません。
どれだけ多くの国・地域の研究機関と、継続的な共同研究関係を構築しているかを評価します。
QSでは、5年間に3本以上の共著論文がある関係を、継続的な共同研究関係として扱っています。
したがって、一度だけ国際共著論文を発表した相手が多数存在する大学よりも、複数国の大学と継続的に共同研究を行っている大学が評価される設計です。
これは国際共著論文の「量」だけでなく、ネットワークの広がりと持続性を評価しようとする指標です。
ARWU・上海ランキングの計算方法
ARWUは、THEやQSと比べて、研究成果に特化したランキングです。
教育環境や外国人学生比率、企業からの評判などは評価項目に含まれません。
ARWUの評価項目と配点
・卒業生のノーベル賞・フィールズ賞受賞者数:10%
・教職員のノーベル賞・フィールズ賞受賞者数:20%
・高被引用研究者数:20%
・Nature・Science掲載論文数:20%
・主要引用索引に収録された論文数:20%
・教員1人当たりの総合研究実績:10%
合計は100%です。
ARWUにおける指標得点の計算
ARWUでは、各指標について最も高い大学を100点とし、他大学を最高値に対する割合として得点化します。
概念的には次の式です。
指標得点 = 大学の指標値 ÷ 最高大学の指標値 × 100
例えば、Nature・Science掲載論文の加重数が、
最高大学:500本
大学C:200本
だった場合、単純化したスコアは、
200 ÷ 500 × 100 = 40点
となります。
その後、N&S指標の重み20%を掛けるため、総合点への寄与は、
40 × 0.20 = 8点
です。
ARWUでは、各指標を加重合計した後、総合得点が最も高い大学を100点とし、他大学の総合得点も最高大学に対する割合として示します。
ARWUの総合点を簡略化して計算してみる
仮に大学Cの各指標得点が次のとおりだったとします。
卒業生受賞者:20点
教職員受賞者:10点
高被引用研究者:40点
Nature・Science論文:35点
主要引用索引論文:60点
教員1人当たり研究実績:45点
加重得点は、
卒業生受賞者
20 × 0.10 = 2.0
教職員受賞者
10 × 0.20 = 2.0
高被引用研究者
40 × 0.20 = 8.0
Nature・Science論文
35 × 0.20 = 7.0
主要引用索引論文
60 × 0.20 = 12.0
教員1人当たり研究実績
45 × 0.10 = 4.5
合計は、
2.0 + 2.0 + 8.0 + 7.0 + 12.0 + 4.5
= 35.5点
となります。
実際には、データ分布に大きな歪みがある場合、統計的な調整が行われるため、この単純計算だけで公表得点を完全に再現できるわけではありません。
受賞歴には時間による重み付けがある
ARWUでは、ノーベル賞やフィールズ賞の受賞者数を単純に数えているわけではありません。
卒業生については、学位取得時期が新しいほど高い重みが設定されます。
例えば、ARWU 2025では、
2011年以降の学位取得:100%
2001年から2010年:90%
1991年から2000年:80%
というように、過去にさかのぼるほど重みが減少します。
教職員の受賞についても、受賞年が新しいほど重く評価されます。
2021年以降の受賞:100%
2011年から2020年:90%
2001年から2010年:80%
という形です。
したがって、歴史的に著名な受賞者を多数輩出している大学が有利ではあるものの、古い実績は一定程度減衰して計算されます。
Nature・Science論文は著者順で重みが異なる
ARWUでは、NatureとScienceに掲載されたArticleについて、著者の所属順に応じた重み付けが行われます。
ARWU 2025では、概ね次のように扱われます。
責任著者の所属:100%
第一著者の所属:50%
次の著者の所属:25%
その他の著者所属:10%
例えば、ある論文について、
責任著者所属:大学A
第一著者所属:大学B
次の著者所属:大学C
その他の著者所属:大学D
だった場合、それぞれの加算値は、
大学A:1.00
大学B:0.50
大学C:0.25
大学D:0.10
となります。
単に共著論文に大学名が含まれているだけで、すべての大学に1本分が加算されるわけではありません。
この仕組みは、論文への中心的な貢献を大学別に区別するためのものです。
ARWUの論文数では社会科学論文が2倍になる
ARWUのPUB指標では、Web of ScienceのScience Citation Index ExpandedとSocial Sciences Citation Indexに収録されたArticleが対象となります。
このとき、Social Sciences Citation Indexに収録された論文には2倍の重みが付けられます。
これは、自然科学と社会科学では論文生産量が異なることを一定程度補正するための措置と考えられます。
例えば、
自然科学論文:800本
社会科学論文:200本
であれば、加重論文数は、
800 + 200 × 2
= 1,200
となります。
ただし、この補正だけで人文社会科学と自然科学の出版文化の違いを完全に調整できるわけではありません。
三つのランキングでは「研究力」の意味が異なる
THE、QS、ARWUは、いずれも大学ランキングですが、そこで示される「研究力」は同じものではありません。
THEにおける研究力
THEでは、研究力を、
・研究者間の評判
・研究費
・教員当たり論文数
・分野補正済み引用インパクト
・上位10%論文
・影響力の高い論文からの引用
などの組み合わせで捉えています。
つまり、研究の規模、環境、質、影響力を総合的に評価しています。
QSにおける研究力
QSでは、研究関連の配点50%のうち、
・学術的評判:30%
・教員当たり被引用数:20%
となっています。
そのため、QSの研究評価は、研究成果そのものだけでなく、国際的な学術コミュニティにおける認知度を強く反映します。
ARWUにおける研究力
ARWUでは、
・国際的な学術賞
・高被引用研究者
・Nature・Science論文
・Web of Science収録論文
を中心に評価します。
研究成果の絶対量と、世界的に突出した研究実績を重視するランキングです。
したがって、「研究力ランキング」という同じ表現を使っていても、実際に測定している概念は異なります。
順位が下がっても研究力が低下したとは限らない
仮に、ある大学の総合得点が前年と同じ60点だったとします。
しかし、他大学の得点が向上し、60点を超える大学が増えれば、その大学の順位は下がります。
例えば、前年は60点で100位だった大学が、翌年も60点だったとしても、他大学が伸びれば120位になる可能性があります。
順位は絶対的な値ではなく、他大学との相対的な位置だからです。
また、次のような要因でも順位は変化します。
・ランキング対象大学数が増えた
・評価指標が追加された
・配点が変更された
・使用する論文データの期間が変わった
・大学統合に伴い所属名の集計方法が変わった
・評判調査の回答者構成が変わった
・論文データベースの収録範囲が変わった
THE 2026では、大学統合に関係する所属情報と評判票の帰属に問題が見つかり、一部大学の順位が再計算されています。東京科学大学は修正前の301~350位から、修正後は166位となりました。これは、研究活動が短期間で急激に変化したのではなく、データの帰属と計算処理が順位に大きく影響した例です。
したがって、前年からの順位変化だけを見て、大学の研究力が向上した、あるいは低下したと結論付けることはできません。
ランキングの順位差はどこまで意味があるのか
ランキングでは、1位違うだけで明確な能力差があるように見えます。
しかし、100位の大学と101位の大学の総合得点差がごくわずかであることもあります。
THEでは上位200大学について個別順位を示す一方、それより下位では「201~250位」「251~300位」のような順位帯を採用しています。
これは、得点差が統計的に明確とは言えない大学を、無理に1位刻みで並べることを避けるためです。
大学ランキングの順位は、小数点以下のスコア差を順位に置き換えたものです。
そのため、20位の順位差があっても、総合得点では1点未満しか違わない可能性があります。
順位差だけでなく、総合スコアや個別指標の差を確認する必要があります。
大学規模はランキングにどう影響するのか
大学ランキングには、規模の大きい大学が有利になる指標と、規模を調整した指標が混在しています。
例えば、論文総数、高被引用研究者数、受賞者数は、大規模大学が有利になりやすい指標です。
一方で、
・教員1人当たり論文数
・教員1人当たり被引用数
・教員1人当たり研究費
・教員学生比率
は、大学規模を分母によって調整しています。
仮に、
大学A:引用数100,000件、教員5,000人
大学B:引用数50,000件、教員1,000人
であれば、引用総数は大学Aが多いものの、教員当たり被引用数は、
大学A
100,000 ÷ 5,000 = 20件
大学B
50,000 ÷ 1,000 = 50件
となり、大学Bの方が高くなります。
したがって、大学ランキングは必ずしも巨大大学だけが有利になる仕組みではありません。
ただし、ノーベル賞受賞者数やNature・Science掲載論文数など、絶対数を重視するARWUでは、研究者数が多く、長い歴史を持つ総合大学が有利になりやすい傾向があります。
分野構成によって順位は変わる
大学の研究分野構成もランキングに大きく影響します。
医学、生命科学、化学などは、一般に論文数と被引用数が多い分野です。
一方、数学、工学の一部分野、人文社会科学では、論文数や引用数が比較的少なく、研究成果が書籍や国内言語の論文として公表されることもあります。
そのため、引用数を単純に比較すると、医学系分野の比重が大きい大学が有利になります。
THEやQSでは、引用指標について分野補正が行われています。
しかし、分野補正を行っても、
・論文データベースへの収録率
・共著者数
・国際共著の頻度
・書籍と論文の重要性
・英語論文の割合
といった出版文化の違いを完全に解消することは困難です。
したがって、総合大学、理工系大学、医科大学、人文社会科学系大学を、単一の総合順位だけで比較することには限界があります。
大学ランキングと国際卓越研究大学制度は同じではない
日本では、国際卓越研究大学制度を世界大学ランキングと結び付けて理解することがあります。
しかし、国際卓越研究大学の審査は、世界大学ランキングの順位だけで決まるものではありません。
文部科学省は、審査の主な観点として、
・国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力
・実効性が高く意欲的な事業・財務戦略
・自律と責任のあるガバナンス体制
を示しています。
つまり、現在の論文実績だけでなく、研究環境、資金調達、人材育成、組織改革、大学経営などを含めた将来的な変革能力が評価されます。
大学ランキングが過去から現在までの実績を定量化する仕組みだとすれば、国際卓越研究大学制度は、現在の実績に加えて、将来の研究大学としての成長可能性や組織変革まで評価する制度と考えられます。
両者は関連しますが、同じ評価ではありません。
大学ランキングを正しく読むための視点
大学ランキングを見る際には、順位だけでなく、少なくとも次の点を確認する必要があります。
第一に、どのランキングなのかを確認します。
THE、QS、ARWUでは評価思想が異なります。
第二に、どの指標の配点が大きいかを確認します。
研究成果を見たいのか、教育環境を見たいのか、国際性を見たいのかによって、参照すべきランキングは異なります。
第三に、総合順位ではなく個別指標を確認します。
総合順位が同じ大学でも、研究の質が高い大学、国際性が高い大学、産学連携が強い大学など、特徴は異なります。
第四に、前年からの順位変化だけで判断しないことです。
対象大学数、評価方法、指標の重み、他大学の動向を確認する必要があります。
第五に、順位とスコアを区別します。
順位が大きく変わっても、大学自身の得点はほとんど変化していない場合があります。
おわりに
大学ランキングは、大学の活動を複数の指標に分解し、標準化と重み付けを行って、一つの総合得点に集約したものです。
その基本構造は、
総合得点 = Σ(標準化された指標得点 × 配点)
と表すことができます。
しかし、どの指標を採用し、どの程度の重みを与えるかはランキングごとに異なります。
THEでは、教育、研究環境、研究の質を幅広く評価します。
QSでは、学術的評判や企業からの評判が大きな比重を占めます。
ARWUでは、受賞者、高被引用研究者、Nature・Science論文など、突出した研究実績が重視されます。
そのため、大学ランキングの順位は、大学の研究力を直接測定した唯一の正解ではありません。
それぞれのランキングが定義した「望ましい大学像」に対して、各大学がどの位置にあるかを示したものです。
ランキングを見る際に本当に重要なのは、「世界何位か」という数字だけではありません。
何を測定し、どのように標準化し、どのような重みで合計した結果なのかを理解することです。
大学の研究力は、論文数、被引用数、研究者の厚み、国際共同研究、研究環境、資金、若手研究者の育成、社会への知識移転など、複数の要素から構成されています。
一つの順位は、その複雑な構造を一列に押し込んだ要約値にすぎません。
大学ランキングは、大学を理解するための便利な入口です。
しかし、順位という出口だけを見ていると、その途中で行われた計算と、そこからこぼれ落ちた大学の特徴を見失うことになります。
参考資料
Times Higher Education, World University Rankings 2026: Methodology
QS, QS World University Rankings: Methodology
ShanghaiRanking, Academic Ranking of World Universities Methodology 2025
文部科学省「国際卓越研究大学制度」



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