小学生のころから、母親の真似をしてキッチンに立つのが好きだった。
友達がゲームをしている時間に、私は冷蔵庫を開けて「今日は何を作ろうかな」と考えていた記憶がある。もちろん最初は簡単なものばかりだったが、料理が完成したときの達成感や、家族がおいしいと言ってくれる喜びが好きだった。
そのせいか、大人になった今でも料理は趣味のひとつである。
テレビではグルメ番組や料理番組をつい見てしまうし、YouTubeのお気に入り登録も圧倒的に料理系が多い。気が付けば、おすすめ動画も料理ばかりになっている。
外食も好きだ。
気になる店を見つけるとスマホにメモしておき、時間が空いたときに食べに行く。
もちろん目的は食べることだけではない。
料理人がどのような味付けをしているのか。
どんな食材の組み合わせなのか。
どんな盛り付けをしているのか。
そんなことを考えながら食べている。
言ってみれば、プロの味を盗みに行っているようなものだ(笑)。
そんな料理好きな私だが、この趣味が子育てで役立つとは思ってもいなかった。
子どもが生まれる前は、自分が食べたいものを好きなように作っていた。
しかし子どもが生まれると事情が変わる。
休日になると家事や育児で忙しい。
そんな中で、自然と私が料理を担当することが増えていった。
「今日は何作るの?」
子どもたちにそう聞かれることも多い。
最近では妻から依頼されるわけでもなく、休日になると自然にキッチンへ向かうようになった。
カレー、ハンバーグ、唐揚げ、オムライス。
子どもたちが喜ぶ定番メニューはもちろん、少し凝った料理に挑戦することもある。
料理をしている時間は不思議と楽しい。
無心になれるし、家族の反応を想像しながら作るのも面白い。
ありがたいことに、妻からも子どもたちからも評判は悪くない。
むしろ好評なことが多い。
ただ、最近ひとつ心配なことがある。
それは「おふくろの味」ならぬ「パパの味」になってしまうのではないかということだ。
多くの人には、おふくろの味があると思う。
子どものころから食べ慣れた料理。
大人になってもふと思い出す味。
そんな料理が、我が家ではパパの料理になってしまうかもしれない。
それは少し複雑な気持ちである。
もちろん嬉しい。
しかし本来なら母親の味として記憶に残るはずのものが、私の料理になってしまうのはどうなのだろうと思うこともある。
料理は作った回数に比例して上達する。
だから本当は、私が作る回数を減らした方が良いのかもしれない。
妻にももっと作ってもらった方が良いのかもしれない。
頭では分かっている。
でも困ったことに、私自身が料理を作るのが好きなのだ。
そしてもうひとつ困ったことがある。
私が作る方がおいしい。
……いや、この話は妻には内緒にしておこう。
今日も休日になると、私はエプロンを身につけてキッチンに立つ。
子どもたちの「おいしい!」という声を聞くために。
そして、いつか子どもたちが大人になったとき、
「あの頃のパパの料理が懐かしいな」
と思い出してくれたら、それはそれで悪くないのかもしれない。


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